大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

高松高等裁判所 昭和34年(ラ)35号 決定

抗告人 福田義郎 外四名

主文

本件各抗告を棄却する。

理由

本件各抗告の趣旨はいずれも、

原決定を取消す、との裁判を求めるというにあり、

其の理由はいずれも、

原裁判所は、抗告人等が株式会社高知新聞社の取締役在任中、昭和三十三年一月二十一日取締役全員任期満了により退任したので遅滞なくその選任手続をなすべきであるのに抗告人等はこれを怠り同年五月三十一日に至り始めて該手続をとつたものであるとの理由で抗告人等に対し各過料五百円に処する旨の決定をなした。しかしながら、右会社定款中には、「取締役は任期中の最終決算期に関する定時株主総会が任期満了後に終結する時はその終結に至るまで任期を伸長する」旨の規定があるから、取締役の任期は当然昭和三十三年五月三十一日の定時株主総会まで伸長され、従つて抗告人等には何等取締役選任手続の懈怠はない。

というにある。

よつて按ずるに、一件記録に徴すれば、抗告人等は昭和三十一年一月二十一日株式会社高知新聞社の取締役に選任せられたこと、昭和三十三年一月二十一日を以て取締役全員の任期が二年を経過すること、しかるに昭和三十三年五月三十一日の定時株主総会まで新たな選任手続がとられなかつたこと、以上の事実が認められる。

しかるところ、抗告人等は右会社の定款によつて昭和三十三年五月三十一日の定時株主総会まで抗告人等の任期が伸長されているから選任手続の懈怠はない旨主張するところ、成程記録添附の同会社定款の第二十六条によると「取締役の任期は二年、監査役の任期は一年とする、但し任期中の最終決算期に関する定時総会が任期満了後に終結する時は、その終結に至るまで任期を伸長する。」旨規定されている。しかしながら、抗告人等の主張する昭和三十三年五月三十一日の定時株主総会は、右に規定する任期中の最終決算期に関する定時総会に該当しないものと解せざるを得ない。なぜならば、右定款の規定は商法第二百五十六条第三項に基いて定められたものであること明らかなところ右法条にいう「任期中ノ最終ノ決算期」とは、任期中に到来する最終の決算期の意味即ち当該決算期が法定の任期(本件においては二年)中に到来していることを要する意味であること明らかであり、定款の規定が右法条の趣旨を逸脱し得ないことは言うを俟たないところである。そこでこれを本件について見るに、右定款第十七条によると右会社の定時株主総会は毎年五月と十一月に開催されるべきこと、第三十三条によると同会社の決算期は毎年四月三十日と十月三十一日であること、が夫々に定められているから、抗告人等主張の昭和三十三年五月三十一日の定時株主総会は、昭和三十三年四月三十日の決算期に関する定時総会であることは明らかである。さすれば、右決算期は、抗告人等取締役の法定の任期(二年)中に到来した決算期ではなく右任期経過後に到来すべき決算期であるから、抗告人等の任期が主張のように昭和三十三年五月三十一日の定時株主総会まで伸長されるいわれはない。

以上説示のとおりであるから、抗告人等取締役は昭和三十三年一月二十一日二年の経過と共に任期満了したものというべく、従てその選任手続に関する懈怠の責は脱れない。

しからば抗告人等に対し商法第四百九十八条第一項第十八号を適用した原決定は正当であり本件抗告は理由がない。(なお、原決定の過料額も不当でないと認める。)よつて非訟事件手続法第二十五条民事訴訟法第四百十四条第三百八十四条第一項に従い本件各抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 山崎寅之助 安芸修 荻田健治郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例